「おや、私の歌を聴きに?……ああ、情報の方でしたか。失礼しました。では改めて、キク・ホンダと申します。今後とも御贔屓に」 記憶とは不思議なもの。あるに越したことはないが、ないところで不便はないし、大した問題はなかったのだ。ただ、なんとなくだが周囲の憐みの眼差しは少しだけ気になる。憐れまなくたっていいのに。別に、他人が思う程に私は可哀想ではないのだから。身体を許した彼に尋ねられてあっけらかんと答えれば、そうかと静かな声が返された。