『桜の木へ』
満開の桜にはしゃぐ仲間たちに温かい目を向け、彼女はブルーシートの上で足を伸ばした。 柔らかい青の空と、揺れる花。毎年こうやって、花を咲かせ、春を祝い、人々を楽しませてきたのだろう。 「あら」 その、枝に。酷い傷を見つけた。立ち上がり、その傷跡をそっと撫でる。包帯を巻いてやるわけにはいかない。けれどどうかこの傷が、この木の命を奪わないようにとそっと寄り添った。