あんたは底抜けに明るくて、有り体に言って馬鹿だったが、馬鹿なあんたの言葉はいつだって、餓鬼には解りやすかった。そしてあんたは全てを呉れたのに、望んだ未来なんて俺はひとつも見せられやしない。それでも。 「なあ、熊本軽便。俺、今度国鉄を辞めるんだ。もうあんたの知ってた『宮地』は、本当にどこにも居なくなるんだな。あの頃とは何もかもが変わっちまったよ。それでもあんたは俺を許してくれるかな」 人の心には時効はないらしいけれど。 「……もう、許してくれるかな。兄貴」