「私は貴方が望む私じゃなくて、私が望む私でいたいんです。私は人形じゃない」
あの日挙式の相談を飛び出して正解だったと、今なら自信を持って言える。じとじと蒸し暑い夏の夕方の国道沿いを歩きながら、堅苦しいスーツなんか脱ぎ捨てて、ついでに髪も切ってしまった。いい気分だ。好きなバーでも働ける。
「貴方が向き合ってくれたから、もっと私が私である喜びをわかることができた」
ありがとう、義文さん。自分が好きな格好、つまり世間一般でいう"女らしくない姿"も彼は認めてくれる。