他人など捨て置けばいいのに、その恩を返してもらえるかもわからないのに、仇で返されることだってあるのに、裏切りだってあるのに。どうしてこの人はこんなにも、こんなにも人のために動けるのだろう。 こんな大人もいるのだという現実に頭が追い付かない。だって、そんな人は今まで存在していなかったのだ。わからない。でもきっとこの人は失ってはならない人なのだろう。 だから、きっと俺は、その手を掴んだのだ。