「俺の力が必要なんやろ?……鉄砲玉、アントーニョ・フェルナンデス・カリエド。いっちょ豪快に燃えたろか」 かつて彼は使い捨ての鉄砲玉に過ぎなかった。だが、それならそれでいいと何かが欠落した火蜥蜴は運命を受け容れる。消えるなら、燃えるなら真っ赤に。そう思って突き進んだ未来に、ひとつの雷が落とされた。傲慢で、泣き虫で、臆病で、危ういふたつの自分を叫ぶ青年。彼に心奪われた瞬間、真っ赤だった世界に色が付け足された。