彼の想い人は壊れていた。 正しく言えば、壊されていた。出会った頃には既に。結果、彼女は血に染まって囚人となった。 何も出来なかった。今も牢獄の中で苦しんでいるのを、見守るしか出来ない。 彼はそっと左腕を撫でる。 彼女に切り落とされた肘から先は、今は骨となっている。怖かった。 でも、不思議なことに、今なお彼女を好きだという気持ちは変わらないのだ。
……いつか、もう一度話せたなら。 淡い願望。 湿気ったクッキーを口に放り込んだ。