空狐は恩人が不幸になることを恐れた。 逃げてしまった理由は、彼女自身がよくわかっている。 空ろな時間に身を任せ、音もなく年月を重ねてゆく。 これは、彼女がまだ“空音”の名前を持たない少女だった頃のお話。