夜は明けない。果てのない包囲網に長く共にしていた武具は先刻砕け折れた。次は自分の心だろう。どうかと懇願する言葉を当の主人は一笑に付して、誰のものかも知れない血で汚れた手袋を捨てた。「貴方を捨てて得るものに何の価値がありますか」