「ああ、良かった。少し不安だったが、間に合ったみてぇだな。ほら、あれだ。」
荒れ果てた都市の片隅。かつては植物園という名の、研究施設だった場所。今は本物の植物など一つも残らず、その全てがオラクル細胞によって構成された緑。その片隅に、色鮮やかな蒼を咲かせた木があった。明日は雨。血の雨。ここで展開される防衛戦が焼き尽くしてしまうだろう花を、ただ彼女に見せたかった。何を置いても、その花を。見せたかっただけだ。