御曹司たる青年は、舞踏会を楽しんでいた。求めるもの全てが手に入る程、彼は裕福であった。しかし、青年はどこか物足りない、と感じていた。心の中にぽっかりと穴が空いてしまっているような、そんな感覚を持ちながら。裕福で満ち足りつつ、物足りなさのある生活が終止符を告げようとしている事に、この時の青年は気が付かなかった。