もとより何にも執着しない性質だった彼女は、黒軍へのスパイとして派遣されるという話を聞いてもすぐに頷いた。 自分にはなにも大切にできないのだと、諦めていたとも言えるだろう。 それでも、彼女は、はじめて誰かを『友人』と呼びたいと、そう思ったのだった。
「私は、あなたの特別になれたでしょうか」