「父さん、私は看守の血統です。祖父もあなたも私も、罪を裁き罰を与える英雄だと。そう仰いましたね」
父は血を吐いた。思う通り、血は赤い絨毯によくなじんでくれた。
「ならば何故、あなたは公平な罰を与えなかったのでしょうか。罪と罰は釣り合うのだと、そう教えたのはあなたではありませんでした。自分の力に酔いしれ、正確な罪を裁き、まばらな罰を与えたあなたは」
差し出した紅茶に銀の匙を入れ、カラカラ回す。
「あなたは英雄では無かったのです」
銀の匙は真っ黒に染まった。