「あ、万里さん。お帰りなさい」
澄深はそう言いながらキッチンからぴょこり、と顔を出した。
「お月見団子作ったんです。今日は中秋の名月だーって、さっきスーパーで聞いて……」
彼が手にしている古めかしい三方には、お団子がきちんと、行儀よく並んでいた。 わずかに黄色味がかっているそれは見るからに柔らかそうで、近くに居るだけで甘い香りが漂ってくる。
「サツマイモを練りこんでみたんです。お茶も淹れるので、一緒に食べませんか?」